小さな会社の社長さん、退職金の準備はできてますか?
終身雇用が崩壊しつつある時代、退職金制度を廃止して、その分を毎月の給料に上乗せする企業も増えているそうです。うちの会社ではそんな時代に流されず、退職金制度をきちんと残しています。
給与と違って一時期に高額が支払われるものなので、会社の負担も大きいのですが、その分うちのような小さな会社ではメリットもあるんです。
退職金のメリット
メリット① 労務上のメリット
退職金には社会保険料がかかりません。社会保険料は厚生年金と健康保険を合わせて給与の20%にもなります。これを会社と社員で折半するのですが、退職金には社会保険料がかからないので、給与よりも会社も社員もお得になります。
さらに退職金にも所得税や住民税はかかりますが、退職所得控除や分離課税など税負担が軽くなるよう配慮されています。
メリット② 税務上のメリット
退職金にかかる税金は、退職所得から退職所得控除を差し引いた金額に1/2を掛けて算出した課税所得に対してかかってきます。
退職所得≦退職所得控除であれば、課税所得が0円以下なので退職金にかかる税金も0円です。
なので、退職金を受け取る社員の税負担を軽くし、より多く手元に残せるようにするには、退職金の金額を勤続年数に応じた退職所得控除額ギリギリに設定するのも一つのやり方です。
そんな退職所得控除額は、次のように決められます。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
20年以下 | 40万円×勤続年数 |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数ー20年) |
1年未満の端数は繰り上げになるので、1日でも1年として計算します。
例えば、大学卒業から定年まで38年勤め上げた場合の退職所得控除は、「800万円+70万円×(38年ー20年)=2060万円」となり、退職金2060万円までなら税金はかからず、丸々懐に入れることができます。
厚生労働省が発表している就労条件総合調査の結果によると、大学卒で定年を迎えた人の退職金は平均2000万円弱ですので、退職金を一括で受け取った場合はほとんど税金はかからないことが多いのではないでしょうか。
お得な退職金の金額
退職金制度がある会社としては、将来の支給に向けて退職金を計画的に積み立てておかなければいけません。小さな会社では、そんな積立金を全額損金に算入できる制度があります。それが中小企業退職金共済と小規模企業共済です。
勤続年数20年と38年で退職所得控除を目一杯活用するための掛金と、退職金として受け取れる金額を試算してみました。
【従業員】中小企業退職金共済の場合
納付月数 勤続年数 | 掛金月額 | 掛金合計 | 退職金 退職所得控除の額 |
240ヶ月 20年 | 30,000円 | 7,200,000円 | 7,999,800円 8,000,000円 |
456ヶ月 38年 | 上限30,000円 | 13,680,000円 | 16,694,100円 2,0600,000円 |
【経営者】小規模企業共済の場合
納付月数 勤続年数 | 掛金月額 | 掛金合計 | 共済金B(老齢給付) 退職所得控除の額 |
240ヶ月 20年 | 30,000円 | 7,200,000円 | 7,976,400円 8,000,000円 |
456ヶ月 38年 | 37,000円 | 16,872,000円 | 2,0623,800円 2,0600,000円 |