おでんヒストリー
おでんの発祥は室町時代、味噌を自家製していた農民たちが豆腐を竹串に刺し味噌を塗って炙って食べていた「豆腐田楽」。田んぼの神様を祭って一本足の竹に乗って踊る「田楽」という舞が豆腐に竹串を刺した形に似ていたことから名付けられた。これを当時流行っていた女房詞に倣い「田楽」を略したものに「お」をつけて「おでん」と呼ぶようになったという。
江戸時代、爆発的な人口増加により江戸では天ぷらや鮨の屋台など外食産業が人気に。おでんをつまみに酒を飲める「おでん燗酒屋」も登場。山東京伝の弟・山東京山と歌川豊国による「菊寿童霞盃」中編には「おでん燗酒」の看板がついた屋台が描かれている。
江戸時代中期になると、焼いて味噌をつける「辛口」の他に、せっかちな江戸っ子がすぐに食べられるよう醤油と砂糖や酒で煮込んだ「甘口」も登場。当時は串に刺した田楽を煮しめた料理だったという。
明治になると、本郷「呑喜」が大きな丸鍋にたっぷりの出汁で煮込む独自のおでんを出し、これが関西に伝わり「関東煮(かんとうだき)」になったとも言われる(大阪日本橋「おでん屋 たこ梅」の「広東煮」が発祥との説も)。
さらに日本橋「一平」が薄口の飲める出汁のおでんを出すと大人気に。
おでんが家庭料理として定着したのは戦後。麻布十番「福島屋」や吉祥寺「塚田水産」がおでん種の販売を開始。
西麻布「六根」の懐石おでん(1990年)、銀座「よしひろ」のトマトおでん(1998年)など進化系おでんが登場。
おでんマップ
北海道(室蘭おでん)
おでん種は海鮮が多く、串刺しが主流。「マフラー」「揚げかまぼこ」と呼ばれる分厚いさつま揚げもある。根室などではラーメン店のサイドメニューにおでんが定番。
東北(青森生姜味噌おでん)
串刺しのおでん種に味噌をかける、田楽が主流でつけダレの味噌には生姜が入っている。おでん種は地域によってコンニャク(白と黒)か豆腐、「大角天」と呼ばれる薄いさつま揚げなど種類は少ない。
北陸(富山おでん・金沢おでん)
富山では白エビや甘エビを使ったつみれなど魚介系の種などにとろろ昆布をのせて食べるのが一般的。石川・金沢では加賀レンコンや源助大根などの加賀野菜の種、福井ではこんにゃくおでんが一般的で木の芽や山椒を加えた白味噌をつけて食べる地域も多い。
関東(小田原おでん)
蒲鉾の名産地・小田原では、辛子ではなく名産の梅を使った「梅味噌」で食べる「小田原おでん」で町おこし。
東海(静岡おでん・名古屋おでん)
大正時代に生まれた真っ黒いツユと「ダシ粉」と呼ばれる削り節や青海苔をかけて食べる「静岡おでん」。おでん種は当時捨てられていた牛スジや豚モツ、焼津などの港町で作られていた黒はんぺんなど。おでんは駄菓子屋でも売られている。
東京でも浅草橋「びんてじ」など静岡おでんのお店がいくつかある。
主に名古屋で食べられている八丁味噌で煮込んだ「どて煮(名古屋おでん)」。おでん種には味の付いた練り物や具材は使わない。名古屋以外の地域では出汁で煮たおでんに八丁味噌ベースのタレをつけて食べる。
関西(姫路おでん)
昆布や鰹節でとった出汁と薄口醤油で作る薄味のおでんが主流。おでん種はかつてはクジラ(舌、本皮、スジ)が多かったが牛スジが定番に。
姫路では濃口醤油に土生姜を溶いたタレで食べる。
中国(松江おでん)
島根・松江では春菊や芹などの葉物の種が多い。広島では鶏がらや牛スジを使ったおでんが食べられている。
四国(讃岐おでん)
香川ではうどん店のサイドメニューとしておでんが定着。うどんの具として食べたり、からし酢味噌をつけて食べるのが一般的。愛媛・宇和島では「じゃこ天」が定番のおでん種。
東京でも赤羽岩淵「手打ちうどん すみた」やチェーン店の「丸亀製麺」など讃岐うどん店でサイドメニューとして提供しているお店も。
九州(博多おでん)
博多では鶏がらでとった出汁に、餃子を魚のすり身で包んで揚げた「餃子巻」が定番。熊本では「馬のスジ」などが食べられている。鹿児島では豚骨で出汁をとったおでんも多い。
沖縄(沖縄おでん)
沖縄ではおでんは一年を通して食べられていて、テビチ(豚足)やソーセージを入れることも。
東京の沖縄料理店にも食べることができるお店がいくつかある。